臨床成績
海外コンパッショネートユース試験(PR001-CLN-006試験)(単群、非盲検、多施設共同、コンパッショネートユース試験、海外データ、2004-2007年) 承認時評価資料:海外コンパッショネートユース試験(PR001-CLN-006試験)
- 【目 的】
- メグルダーゼ®投与後の血漿中MTX濃度を評価することにより、有効性を確認するとともに、MTXの毒性が認められ、他の治療選択肢がない患者に、コンパッショネートユースとしてメグルダーゼ®を提供する。
- 【対 象】
-
MTX・LV救援療法により腎毒性及びMTX排泄遅延が認められた患者149例
・ 中央測定MTX HPLC解析集団:27例
・ 施設内測定MTX解析集団:134例
・ 安全性解析対象集団:149例
- 【方 法】
- メグルダーゼ®投与直前の血漿中MTX濃度が100μmol/L以下の患者には、メグルダーゼ®を1回投与した。血漿中MTX濃度が100μmol/Lを超える患者には、メグルダーゼ®初回投与開始48時間後に2回目のメグルダーゼ®投与を行ってもよいこととした。なお、メグルダーゼ®の投与は50U/kgを5分間かけて静脈内投与した。

*22005年11月以降は、1回あたりのメグルダーゼ®の投与量の上限を体重に関わらず2,000Uとした
選択基準
・ 骨肉腫患者で、血中MTX濃度が次の①、②のいずれかを満たす患者:
又はMTX投与開始から48時間後以降:5μmol/Lより高値
②MTX投与開始から12時間後以降:平均消失曲線の2標準偏差より高値かつ腎機能異常*3あり
*3血清クレアチニン(sCr)がMTX投与前のベースライン値から2倍を超えて上昇することと定義
*4sCrが基準値上限の1.5倍を超える、又はクレアチニンクリアランス(CrCl)が60mL/分未満であることと定義
除外基準
※国内におけるメグルダーゼ®静注用1000の承認された用法及び用量は「通常、グルカルピダーゼ(遺伝子組換え) として50U/kgを5分間かけて静脈内投与する。なお、初回投与48時間後の血中メトトレキサート濃度が1μmol/L以上の場合は、初回と同じ用法及び用量で追加投与することができる。」です。
※国内におけるロイコボリン®注3mgのメトトレキサート・ロイコボリン救援療法に対して承認された用法及び用量(抜粋)は「◇メトトレキサート・ロイコボリン救援療法:通常、メトトレキサート投与終了3時間目よりロイコボリンとして1回15mgを3時間間隔で9回静脈内注射、以後6時間間隔で8回静脈内又は筋肉内注射する。メトトレキサートによると思われる重篤な副作用があらわれた場合には、用量を増加し、投与期間を延長する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」です。【2021年12月現在】
- 【評価項目】
-
主要評価項目:CIR(Clinically important reduction)*5達成割合(中央測定)
副次評価項目:血漿中MTX濃度におけるベースラインからの変化率(中央測定、施設内測定)、2回目のメグルダーゼ®投与が血漿中MTX濃度に及ぼす効果(中央測定、施設内測定)、血漿中MTX濃度のリバウンド*6(中央測定)、CIR達成割合(施設内測定)、メグルダーゼ®投与1日後又は2日後以降の血漿中MTX濃度が1μmol/L以下であった患者の割合(施設内測定)など *5CIR:メグルダーゼ®投与8日後までのすべての採血時点で中央測定による血漿中MTX濃度が1μmol/L以下 *6 リバウンドの定義:メグルダーゼ®投与後に血漿中MTX濃度が低下した後、ある時点の濃度が最低濃度の2倍を超えて上昇し、当該時点の濃度と最低濃度との差が1μmol/Lを超えること
- 【解析計画】
- 主要評価項目及び全ての副次評価項目について、記述統計量を算出した。主要評価項目である中央測定に基づくCIR達成割合については、CIRを達成した患者数、並びにCIR達成割合及びその95%CI(Newcombe and Altman法によるCI)を用いて要約した。中央測定 MTX HPLC解析集団での血漿中MTX濃度のリバウンドは、記述統計量を用いて要約した。また、施設内測定に基づくCIR達成割合を算出した。施設測定MTX解析集団でのメグルダーゼ®初回投与1日後以降及び2日後以降の血漿中MTX濃度が全て1μmol/L以下であった患者の割合を算出した。施設測定MTX解析集団での血漿中MTX濃度のベースラインからの変化率の経時的推移についても要約した。
患者背景、安全性解析対象集団/中央測定MTX HPLC解析集団
安全性解析対象集団、中央測定MTX HPLC解析集団のベースライン時における患者背景は以下の通りであった。
項目 | 安全性解析対象集団 (n=149) |
中央測定MTX HPLC解析集団 (n=27) |
|
---|---|---|---|
年齢中央値、歳[範囲] | 18.0[0-85] | 16.0[5-84] | |
年齢層、歳 | 12歳未満 | 30(20.1%) | 3(11.1%) |
12歳以上18歳未満 | 42(28.2%) | 11(40.7%) | |
18歳以上65歳末満 | 55(36.9%) | 9(33.3%) | |
65歳以上 | 22(14.8%) | 4(14.8%) | |
性別 | 男性 | 94(63.1%) | 17(63.0%) |
女性 | 54(36.2%) | 10(37.0%) | |
不明 | 1(0.7%) | 0 | |
体重中央値、kg[範囲] | 68.20[3.5-155.4] | 67.30[24.8-119.0] | |
体表面積*1中央値、m2[範囲] | 1.78[0.25-2.70] | 1.76[0.94-2.45] | |
診断名 | 骨肉腫 | 44(29.5%) | 12(44.4%) |
急性リンパ性白血病 | 34(22.8%) | 3(11.1%) | |
非ホジキンリンパ腫 | 33(22.1%) | 6(22.2%) | |
原発性中枢神経系リンパ腫 | 27(18.1%) | 4(14.8%) | |
その他 | 9(6.0%) | 2(7.4%) | |
不明 | 2(1.3%) | 0 | |
MTX | MTX 投与量中央値、g/m2 | 5.00 | 8.00 |
投与時間中央値、時間 | 4.0 | 4.0 | |
ベースラインの血漿中濃度 中央値、μmol/L(中央測定) |
n=24 | n=24 | |
37.09 | 37.09 | ||
ベースラインの血漿中濃度 中央値、μmol/L(施設測定) |
n=133 | n=27 | |
27.30 | 44.94 | ||
LV投与*2 | 1日以上 | n=114 | |
82(71.9%) | |||
2日以上 | n=93 | ||
57(61.3%) | |||
救援療法を実施した患者 | 35(23.5%) | 8(29.6%) | |
血液透析 | 21(14.1%) | 6(22.2%) | |
血液濾過 | 3(2.0%) | 0 | |
薬物治療 | 15(10.1%) | 2(7.4%) | |
その他 | 1(0.7%) | 0 |
*1体表面積の報告値が欠測していた場合は、Mosteller式を用いて算出した
*2
1日投与量1,200mg以上
メグルダーゼ®初回投与から3日以内の期間中、少なくとも1日又は2日分のLV投与データを有する患者を含む
有効性
中央測定MTX HPLC解析集団27例における結果
■CIR*1達成割合【主要評価項目】 27例中14例がCIRを達成し、CIR達成割合(95%CI*2)は51.9(34.0-69.3)%であった。
CIR達成例 | 中央測定MTX HPLC解析集団(n=27) |
---|---|
n(%[95%CI]) | 14(51.9[34.0-69.3)%) |
*1CIR:メグルダーゼ®投与8日後までのすべての採血時点で中央測定による血漿中MTX濃度が1μmol/L以下
*2Newcombe and Altman法によるCI
■血漿中MTX濃度におけるベースラインからの変化【副次評価項目】
血漿中MTX濃度(中央値、四分位数)の経時的推移は以下の通りであった。
ベースラインの中央値(37.09μmol/L)から初回投与15分後の中央値は0.16μmol/Lであり、血漿中MTX濃度のベースラインからの低下率(MTX低下率)の中央値は99.30%であった。
投与15分後以降(投与30分後から8日後まで)の全ての評価時点において、血漿中MTX濃度の中央値は1μmol/L未満であり、MTX低下率の中央値は97.34%以上であった。

■血漿中MTX濃度のリバウンド*1【副次評価項目】 27例中4例(14.8%)に血漿中MTX濃度のリバウンドが認められ、その詳細は以下の通りであった。
項目 | 中央測定MTX HPLC解析集団(n=27) |
---|---|
リバウンドが認められた患者 | 4(14.8%) |
血漿中MTX濃度の最低値からの変化量*2中央値、μmol/L[範囲] 1μmol/Lを超えて2μmol/L以下の患者 2μmol/Lを超えて5μmol/L以下の患者 |
1.67[1.439-2.492] 3(11.1%) 1(3.7%) |
リバウンドまでの時間*3の中央値、時間[範囲] | 56.13[48.75-72.08] |
*1 リバウンドの定義:メグルダーゼ®投与後に血漿中MTX濃度が低下した後、ある時点の濃度が最低濃度の2倍を超えて上昇し、当該時点の濃度と最低濃度との差が1μmol/Lを超えること
*2変化量は、メグルダーゼ®投与後の最低血漿中MTX濃度からの最高上昇量とした
*3リバウンドまでの時間は、メグルダーゼ®初回投与からリバウンド基準に該当する血漿中MTX濃度が最初に認められるまでの時間とした
■2回目のメグルダーゼ®投与が血漿中MTX濃度に及ぼす効果【副次評価項目】 メグルダーゼ®投与直前の血漿中MTX濃度が100μmol/Lより高値だった患者のうち追加投与された6例を対象として、メグルダーゼ®初回投与48~49.5時間後に2回目の投与を行った。6例中4例(下表A~Dの患者)では2回目投与直前の血漿中MTX濃度が1μmol/Lより高値(範囲:2.025~3.295μmol/L)であり、2回目のメグルダーゼ®投与による効果を評価することが可能であった。2回目投与後の初回評価時点でのMTX低下率の範囲は14.7~41.7%であったが、4例のいずれも、血漿中MTX濃度は依然として1μmol/Lを超えていた。
患者 | 2回目の メグルダーゼ® 投与時間*1(時間) |
2回目投与前の 血漿中MTX濃度*2(μmol/L) [測定から2回目投与までの時間(時間)] |
2回目投与後の 血漿中MTX濃度*3(μmol/L) [2回目投与から測定までの時間(時間)] |
血漿中MTX濃度 の変化率(%) |
---|---|---|---|---|
A | 49.5 | 3.288 [0.75] | 1.883 [22.83] | -41.7 |
B | 48.02 | 2.334 [23.65] | 1.75[ 0.18] | -25.0 |
C | 48.3 | 2.025 [0.50] | 1.643 [1.00] | -18.9 |
D | 48.17 | 3.295 [0.25] | 2.81 [0.33] | -14.7 |
E | 48.23 | く0.05 [0.00] | く0.05 [1.08] | 0.0 |
F | 48.0 | 0.406 [0.00] | 0.476 [0.25] | +17.2 |
*1メグルダーゼ®初回投与からの時間
*22回目のメグルダーゼ®投与前に測定された最後の血漿中MTX濃度
*32回目のメグルダーゼ®投与後に測定された最初の血漿中MTX濃度
施設内測定MTX解析集団134例における結果
■CIR*1達成割合【副次評価項目】 134例中62例がCIRを達成し、CIR達成割合(95%CI*2)は46.3(38.1-54.7)%であった。
CIR達成例 | 施設内測定MTX解析集団(n=134) |
---|---|
n(%[95%CI]) | 62(46.3[38.1-54.7)%) |
■メグルダーゼ®投与1日後又は2日後以降の血漿中MTX濃度が1μmol/L以下であった患者の割合【副次評価項目】 メグルダーゼ®投与後の施設内臨床検査室におけるMTX濃度測定はDAMPA*による干渉を受けることが予測されたため、メグルダーゼ®投与1日後以降の施設内測定による血漿中MTX濃度、並びにメグルダーゼ®投与2日後以降の施設内測定による血漿中MTX濃度が、全て1μmol/L以下であった患者の割合についても更に評価を実施した。
血漿中MTX濃度が1 μmol/L以下であった患者 | 施設内測定MTX解析集団(n=134) |
---|---|
メグルダーゼ®投与1日後以降、n(%[95%CI]) | 70(52.2[43.8-60.5]%) |
メグルダーゼ®投与2日後以降、n(%[95%CI]) | 74(55.2[46.7-63.4]%) |
■血漿中MTX濃度におけるベースラインからの変化【副次評価項目】
血漿中MTX濃度(中央値、四分位数)の経時的推移は以下の通りであった。
ベースラインの中央値(27.30μmol/L)からメグルダーゼ®初回投与15分後、30分後、60分後、120分後及び4時間後の血漿中MTX濃度の中央値はそれぞれ25.00、12.63、44.90、8.15、9.79 μmol/Lであり、MTX低下率の中央値はそれぞれ70.45、0.00、64.49、78.57、86.19%であった。
初回投与1日後及び2日後の血漿中MTX濃度(施設内測定)注)の中央値は1μmol/L未満であり、MTX低下率の中央値はそれぞれ92.19%、95.21%であった。その後の初回投与22日後までの全ての評価時点においても、血漿中MTX濃度(施設内測定)の中央値は1μmol/L未満に維持された。

注)施設内測定(イムノアッセイ法)の血中MTX濃度にはDAMPAが干渉し、血中MTX濃度が過大評価される場合がある
■2回目のメグルダーゼ®投与が血漿中MTX濃度に及ぼす効果【副次評価項目】
施設内測定MTX解析集団において、2回目のメグルダーゼ®投与を受けた患者は29例であり、このうち26例では2回目投与前の血漿中MTX濃度が1μmol/Lを超えていた[範囲:2.1-1,205μmol/L]。
26例中25例では2回目投与後の初回評価時点で血漿中MTX濃度の低下が認められ、MTX低下率の範囲は2.0~91.7%であったが、25例中23例の血漿中MTX濃度は依然として1μmol/Lを超えていた。
メグルダーゼ®静注用1000添付文書(第1版):12. 臨床検査結果に及ぼす影響(一部抜粋)
12.1 イムノアッセイ法による血中メトトレキサート濃度測定への干渉
安全性
■有害事象
有害事象は安全性解析対象集団149例中131例(87.9%)に、Grade 3以上の事象は108例(72.5%)に発現した。重篤な有害事象は53例(35.6%)に認められ、投与中止に至った有害事象は認められなかった。
有害事象による死亡は18例(12.1%)に認められた。
■主な有害事象(全Grade、10%以上に認められた事象)
事象名 | 安全性解析対象集団(n=149) |
---|---|
全Grade | |
有害事象発現例数 | 131 (87.9%) |
腎障害 | 58 (38.9%) |
嘔吐 | 44 (29.5%) |
悪心 | 44 (29.5%) |
口内炎 | 41 (27.5%) |
下痢 | 25 (16.8%) |
■主なGrade 3以上の有害事象(5%以上に認められた事象)
事象名 | 安全性解析対象集団(n=149) |
---|---|
Grade 3以上 | |
有害事象発現例数 | 108 (72.5%) |
腎障害 | 40 (26.8%) |
嘔吐 | 15 (10.1%) |
悪心 | 13(8.7%) |
口内炎 | 13(8.7%) |
アラニン・アミノトランスフェラーゼ異常 | 10(6.7%) |
貧血 | 9 (6.0%) |
好中球数異常 | 8 (5.4%) |
■重篤な有害事象、投与中止及び死亡に至った有害事象
安全性解析対象集団(n=149) | |
---|---|
重篤な有害事象 | 腎障害11例、好中球数異常7例、好中球減少症5例、死亡5例、血小板障害3例、 アラニン・アミノトランスフェラーゼ異常2例、血小板数減少2例、 白血球数減少2例、白血球減少症2例、白血球障害2例、神経系障害2例、傾眠2例、 高尿酸血症2例、低カリウム血症2例、口内炎2例、低血圧2例 |
投与中止に至った有害事 | なし |
死亡に至った有害事象 | 死亡11例、悪性新生物進行3例、多臓器不全1例、エンテロコッカス検査陽性1例、 好中球減少性敗血症1例、呼吸性アシドーシス1例、急性心筋梗塞1例、 うっ血性心不全1例、敗血症1例、腎障害1例、限局性感染1例、骨髄毒性1例、 粘膜の炎症1例、肺毒性1例、皮膚毒性1例 |