メグルダーゼ®について
開発の経緯
メグルダーゼ®[一般的名称:グルカルピダーゼ(遺伝子組換え)]は、遺伝子組換えVariovorax paradoxusグルタミン酸カルボキシペプチダーゼであり、390個のアミノ酸残基からなるサブユニット2個で構成されるタンパク質である。グルカルピダーゼ(遺伝子組換え)[以下、グルカルピダーゼ]は葉酸アナログであるメトトレキサート(MTX)からカルボキシ末端のグルタミン酸残基を加水分解し、4-deoxy-4-amino-N10- methylpteroic acid(DAMPA)及びグルタミン酸を生成する作用を有する。
骨肉腫細胞等の腫瘍細胞では細胞増殖抑制作用を有するMTXを細胞内に能動的に取り込む機構が欠落している。メトトレキサート・ロイコボリン救援療法(MTX・LV救援療法)は、MTXを大量に投与することによって細胞内に受動的に取り込ませ、一定時間後にMTXの解毒剤であるロイコボリン(LV)を投与し、能動的にLVを取り込むことのできる正常細胞を救援する。このMTX・LV救援療法では、低用量MTXでは効果のみられなかった腫瘍に対しても高い抗腫瘍効果が得られる。
MTX・LV救援療法では、時に尿細管内腔に析出したMTX及び代謝物7-hydroxy-methotrexate(7-OH-MTX)の結晶が沈着し、結晶性腎症として腎機能障害を引き起こすことが知られている。MTXは主に腎臓を介して排泄されるため、腎機能に障害が生ずるとMTXの排泄が遅延し、MTX中毒が起こる。その結果、様々な臓器が高濃度のMTXに長期間曝露されることにより腎臓以外の臓器にも障害が引き起こされる。
MTX中毒の対処法には支持療法(大量輸液、尿アルカリ化)、LV救援療法、血液浄化療法が行われる。
しかし、これらを施行してもなお、MTX・LV救援療法に伴う重篤で致死的なMTX中毒が発現することがある。また、LV濃度は正常組織細胞への輸送でMTXより有利に競合できるだけの高い濃度でなければならず、血中MTX濃度が高い場合にはLVの解毒作用は強くないことや血液浄化療法によるMTXの除去に関する効果を評価するデータがないことから、上昇した血中MTX濃度を低下させる対処法が求められていた。
メグルダーゼ®はMTXを加水分解する酵素製剤であり、海外コンパッショネートユース試験(PR001-CLN-006試験)では、静脈内投与により血中MTX濃度を速やかに低下させる効果が確認されたため、米国でBTG International Inc.により承認申請が行われ、2012年1月に承認された。現在の効能又は効果は「腎機能障害によりメトトレキサートのクリアランスが低下(血漿中メトトレキサート濃度がメトトレキサート用量に特異的なメトトレキサートの平均消失曲線から2標準偏差を超えている)した成人及び小児患者の中毒域の血漿中メトトレキサート濃度(>1μmol/L)の低下」である。
国内では医師主導治験2試験が実施され、国内第Ⅰ相試験(CPG2-PⅠ試験)では健康成人男性を対象として安全性及び薬物動態を評価した。国内第Ⅱ相試験(CPG2-PⅡ試験)は、MTX・LV救援療法後にMTX排泄遅延が認められる患者を対象としてMTX低減効果を評価した。更に、CPG2-PⅡ試験の結果の類似性を確認するため、CPG2-PⅡ試験と同様の対象を患者として国内第Ⅱ相試験(OP-07-001試験)を実施した。
以上の臨床試験データに基づき、製造販売承認申請を行い、2021年9月、以下の内容にて承認された。
- メグルダーゼ®静注用1000
- 効能又は効果:メトトレキサート・ロイコボリン救援療法によるメトトレキサート排泄遅延時の解毒
- 用法及び用量:通常、グルカルピダーゼ(遺伝子組換え)として50U/kgを5分間かけて静脈内投与する。なお、初回投与48時間後の血中メトトレキサート濃度が1μmol/L以上の場合は、初回と同じ用法及び用量で追加投与することができる。
特性
メグルダーゼ®[一般的名称:グルカルピダーゼ(遺伝子組換え)]は、遺伝子組換えVariovorax paradoxusグルタミン酸カルボキシペプチダーゼであり、390個のアミノ酸残基からなるサブユニット2個から構成されるタンパク質である。
グルカルピダーゼは、MTXのカルボキシ末端のグルタミン酸残基を加水分解することにより、血中のMTX濃度を低下させると考えられている。
MTX・LV救援療法の施行によりMTX排泄遅延が認められた成人及び小児患者15例を対象とした国内第Ⅱ相試験(CPG2-PⅡ試験)において、主解析対象集団13例の主要評価項目であるCIR(Clinically Important Reduction)*1達成割合(95%CI)は76.9(46.2-95.0)%であった。 *1 CPG2-PⅡ試験におけるCIRの定義:メグルダーゼ®投与開始20分後から4日後までのすべての採血時点で中央測定による血漿中MTX濃度が1μmol/L未満
CPG2-PⅡ試験の血漿中MTX濃度低下率との類似性を確認するため、MTX・LV救援療法施行後にMTX排泄遅延が認められた患者4例を対象とした国内第Ⅱ相試験(OP-07-001試験)において、主要評価項目であるメグルダーゼ®投与開始後20分の血漿中MTX濃度(中央測定)の低下率(平均値±SD)は98.85±0.28%であった。
MTX・LV救援療法による腎毒性及びMTX排泄遅延が認められた患者149例を対象とした海外コンパッショネートユース試験(PR001-CLN-006試験)において、血漿中MTX濃度を中央測定した27例の主要評価項目であるCIR*2達成割合(95%CI)は51.9(34.0-69.3)%であった。
*2 PR001-CLN-006試験におけるCIRの定義:メグルダーゼ®投与8日後までのすべての採血時点で中央測定による血漿中MTX濃度が1μmol/L以下
※ 特性5の臨床成績には一部国内で承認されている用法及び用量とは異なる成績が含まれる。
重大な副作用としてアナフィラキシーを含む過敏症があらわれることがある。
主な他副作用は、血中ビリルビン増加である。
詳細は、添付文書の副作用及び臨床成績の安全性の結果を参照。
メグルダーゼ®静注用1000
用法及び用量: 通常、グルカルピダーゼ(遺伝子組換え)として50U/kgを5分間かけて静脈内投与する。
なお、初回投与48時間後の血中メトトレキサート濃度が1μmol/L以上の場合は、初回と同じ用法及び用量で
追加投与することができる。